チャック・ブラウン&ザ・ソウル・サーチャーズ Live @ Billboard Live TOKYO

下町のお祭り好きのおやじ

……もとい、アメリカはワシントンDCの「ゴッドファーザー・オブ・GO-GO」ことチャック・ブラウンの約2年ぶりとなる来日公演(@ビルボードライブ東京、3/18、2nd)を観てきた。

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前回同様、駆けつけたときにはすでに会場は全国から集結したとおぼしきGO-GO好きたちで占拠され、あたりは異様な熱気に包まれていた。それも無理はない。いちどでも「GO-GO熱」に冒されたことのある者ならば、ライブ直前にでもなれば、身体があのグルーヴとリズムを強烈に欲する禁断症状に似た状態に陥り、いても立ってもいられなくなるのだ。しかも週末でもない平日にわざわざ足を運んで来るようなひとたちは(地方からこのために上京してくるような強者をのぞいても)、大半が無類のGO-GO好きなわけだから、なおさらであろう。かくいう自分も、ライブが始まるまで、身体がうずいて仕方がなかった。

バンドがスタンバイし、あのリズムがスタートされればもう、後戻りはできない。なんせ始まってしまうと、終わるまで文字通りの「ノン・ストップ」なのだ。それがGO-GOである。

焦らさずにわりとあっさり登場したGO-GOの総帥チャック・ブラウン。
全身黒ずくめのいでたち(トレードマークの黒のハットにサングラスはもちろん)で現れたこの73歳のおやじは、お客に対し、ぺこぺことよく頭を下げる。アクの強さばかりが伝わってしまいがちな彼のレコードやCDのジャケット写真などからは想像がつかない人情味あふれるその人懐っこい笑顔も健在だ。
うーん、なんだろう、このえもいえぬ親近感は。さすがは、ワシントンDCのブラックコミュニティという、あくまで限定された空間の中で数十年間「ゴッドファーザー」として生きてきただけある。このひとに必要以上の「大物感」は皆無だ。ゴッドファーザーとか呼ばれていても、なんというか、このひとの場合、浅草あたりにいるお祭り好きな下町の名物おやじのような、身近な愛らしさが感じられる。本当に親しみのある人間たちに囲まれて過ごしてきたひとが持つ特有のおおらかさとでもいおうか、そういう雰囲気を放っている。そんなひとが生み出す音楽は、だから楽しいに決まっているのだ。

まあ、下町の名物おやじ=チャック・ブラウンの人柄の話はこのあたりにして。

バックの演奏メンバーは、前回(2年前)の来日公演ではいた元E.U.のドラマー・JUJUは今回は参加していなかったが、キーボードのスウィート・シェリー(いまのシックでも活躍中)や、トランペットのブラッド・クレメンツらおなじみの面子もいた。

ライブの1曲目は“Harlem Nocturne”。
強烈にはねるGO-GOのビートにのせてあやしげなムードを醸し出すこの曲は、これから始まる真っ黒なGO-GO祭りのオープニングにふさわしい。

そしておなじみ、“It Don't Mean a Thing(If It Don't Have The Go Go Swing)”~“Midnight Sun”~“Moody's Mood”~“Woody Woodpecker”のメドレーへ。これはもう、ファンクにジャズのメロウなグルーヴ感を取り込んだチャック・ブラウン流GO-GOの真骨頂だろう。その心地よさに陶酔。

続く“Run Joe”は打って変わって陽気さ120%のナンバーで、客のボルテージもそろそろ振り切れる寸前。
と、途中トコトコとステージに上がってきたのは、あ、チャック・ブラウンの娘(KK・ドネルソン)! 前回に引き続き、やっぱりまた来ちゃったのね……。そりゃ自分のかわいい娘に「パパ、私も歌いたいわ」とねだられれば(実際には知りませんよ)親父は喜んでステージに上げざるをえないし、下町のおやじというのはえてして、自慢の娘を人前に出したがるものであるから、まあ、致し方ない。とはいえこのKKちゃんはどうしたって他人の目には「自慢の娘」とはうつらないタイプの娘さんであるから悲しいところである。リズム感ゼロのタンバリンを鳴らし、今回も上手くもなんともないラップを披露。でも前回見たときよりもパフォーマーとしての自覚が少しは付いているようにも見えた。前回は本当にステージ上をウロウロ歩き回っていただけだったし。
そういうゆっるーい感じも地元密着型の音楽、GO-GOだからこそ許されるというわけである。こちらも許す気になってしまうから不思議である。

“Run Joe”に続いては、バリー・ホワイトの“Playing Your Game ,Baby”。
これもGO-GOのリズムに合う絶妙な一曲である。低音でしゃがれた歌声のためというのもあるが、チャック・ブラウンとバリー・ホワイトって、意外にも相性がいい。これは僕の勝手なこじつけかもしれないけれど、90年前後に流行ったUKのグラウンド・ビートの文脈でも語られることの多いバリー・ホワイトの音楽は、同じくグラウンド・ビートにリズムの上で少なからず影響を与えたであろうGO-GOと、音楽的な共通点を持っているのではないか。しかしこの点に関してはまたあらためて、ほかの機会に掘り下げてみようと思う。西のバリー・ホワイトと東のチャック・ブラウン。というか、そもそもこの2人って、会ったことあるのだろうか?

話がそれました。

次にステージ前に出てきて、ラップを披露し始めたのは、スウィート・シェリー。この麗しきファンキー・キーボーディストは、鍵盤を弾くだけでなく歌も歌えてパフォーマンス能力も併せ持つというなかなかの才女である。前回も確か、アンジー・ストーンがベティ・ライトとやった“Baby”を堂々と歌っていた。チャック・ブラウンのバンドにはもう必要不可欠な人物のひとりである。

ライブは佳境に近づきつつあったが、ここでおまちかね、リトル・ベニーの登場である。どうやら脚が悪いらしく、杖をついてステージに上がった。ステージ上でも基本イスに座っていた。少し残念ではあったが、それでも、彼が加わるとライブの盛り上がりがまた一気に高まった。彼の独特の振り付け(?)やシャウト、客の煽り方はやはり天下一品である。

そしてリトル・ベニーの参戦で上昇した会場のGO-GO熱は、名曲“Bustin' Loose”で最高潮に。この曲のビートの推進力はすさまじい。客も疲れ知らずでさらに激しく踊りまくる。一方、当のチャック・ブラウンは若干疲れているようにも見えたが(そりゃ年齢を考えれば当たり前である)、しかしこの曲での彼の歌声とホーンの絡みは格別である。
ようやくここで終局に向かったように見えたGO-GO祭りは、しかしそう簡単に終わりを迎えるわけはなく、客が作り物のお札を両手にかかげ始めると、チャック・ブラウンが「お、それはなんだ、それは」と指を差し、そしておなじみの“We Need Some Money”になだれ込むという、これまたおなじみの展開が待ち受けている、というわけである。しかもその後、また“Bustin' Loose”に続けるというオマケ付きである。

約100分に及んだノン・ストップGO-GO祭りは、こうして終わりを迎えたわけだが、会場内にはまだまだ物足りない、というような雰囲気が漂っていた。いまではどうなのか知らないが、昔は、平気で4時間とかやっていたのだから、彼ら(彼)の体力に加えて、あらためてGO-GOの持続性、中毒性のすごさ(ヤバさ)を実感した次第である。

ライブ終了後、ほかのメンバーがはけたあとも、最後の最後まで、客に頭を下げ、「ドモアリガトゴザイマス」を連呼しながら、客と握手を交わすチャック・ブラウンの姿がやはり印象的であった。


できれば、一年に一回はGO-GOを体験したいものである。下町のおやじさん、また待っています。




↓名曲“Bustin' Loose”を語るチャック・ブラウン



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Chuck Brown

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